何日か前、家の電話が鳴りました。
「ピアノの事で・・・」という女性は75歳。
個人レッスンをご希望でした。
今日、茶色くなったバイエルと併用曲集、そしてハノンを大事そうに抱えて体験レッスンにいらっしゃいました。
10年ほど前、ドレドー ドシドーとバイエルから習ってみたけど、いつのまにか通うのを辞めてしまったのだそうです。
「家に娘が置いていったピアノがあるの。
もう、あちこち身体も痛いし、ピアノでも弾いて生活に張り合いを持たせたい。
でも、この間弾いてみたら、何も弾けないの。」
との事。さっそくシニアのための楽譜をご覧いただきました。
ところが、「先生、終活って知ってる?
今ね、要らない物をどんどん片づけてるのよ。
必要な物しか置かないし、余計な物も買わない。
だから、この楽譜を終わらせたいのです。」
と、包装紙できれいにカバーされた『幼児のためのバイエル』を出されました。
「とにかく丸をもらってこの楽譜を片づけてしまいたいのです。」と、目標は終わらせることでした。
そうか、終活なんだ。
私は、この方が何を必要とされているのかを判断し、まずは、その茶色くなったバイエルを弾いていただきました。
懐かしそうに、嬉しそうに弾くお姿にまたまた感動です!
併用曲集は、赤で花丸が沢山ついていました。
かつて頑張られていたご様子が楽譜から読み取れます。
子供用なので曲は「かっこう」や「ちょうちょ」など。
さりげなくシニアのための楽譜をお見せすると、
「これもいいわねぇ。 でも、まずは、これを終わらせてからね。」